【審査員】
委員長 中村 好文氏(レミングハウス)
委 員 関 邦則氏(長野県建築士会名誉会長・(有)関建築とまち研究室)
委 員 場々 洋介氏(長野県建築士会長・(株)フジ設計)
このたび、長野県建築文化賞の審査委員長として、一次審査、二次審査の大役をつとめさせていただいた。今回、応募作品は一般部門14点、住宅部門26点、リノベーション部門5点だったが、この中から昨年11月11日の一次審査で現地審査に残った作品は、一般部門4点、住宅部門6点、リノベーション部門2点の合計12点。
年が明けて1月27日~28日の2日間にわたって、長野県各地に点在する力作ぞろいの12作品を審査して回ったが、この現地審査ツアーは住宅設計を主たる仕事としている私にとって非常に刺激的かつ有意義な経験になった。
現地審査が進むにつれて私が感じたのは、審査の対象になった建物の用途が、市庁舎、研究所、多目的施設、保育園、住宅、別荘と多岐にわたり、規模も予算もピンからキリまである建物をひとつの土俵に乗せて審査することの難しさである。
二次審査に残った作品はそれぞれに揺るぎないコンセプトがあり、建築計画的にも破綻がない秀作ぞろいなので、なおさらのこと。つまり、なにか自分なりのはっきりした審査基準がなければ作品に優劣のつけようがないと感じたのである。
「歌心」という言葉があり、仮に楽譜どおりに唄えても、そこに「歌心」がなければ人を感動させることができないように、私は建築にも「建築心」がなければならないと考えている。
今回の審査で、私は候補作品に「建築心」が感じられるかどうかを審査基準のひとつにした。別の言い方をすると、理性ではなく感性に直接的に訴えかけてくる作品を高く評価したいと考えたのである。一般部門・最優秀賞の「HIOKIイノベーションセンター」、住宅部門・最優秀賞の「飯綱山荘」に上質で柔和な「建築心」を感じることができたことが、大きな収穫だった。
(審査員長 中村好文)