審査委員長 東 利恵
審査委員 出澤 潔
審査委員 関 邦則
今回長野県建築文化賞が第10回を迎えるにあたり、応募の条件枠をひろげて、会員外の応募も可能になり、若い建築家を含め質の高い多くの応募があったことは大変有意義でしたし、刺激になる結果だったのではないかと思います。特徴的であったのは、優良な建築を地元で長年作ってきた方々の作品と新しい世代が長野に移りあるいは戻ってきて、新しい風を吹き込んでいる作品があったということでしょう。
一般部門の最優秀賞の「安曇野市穂高交流学習センターみらい」、優秀賞の「緑のオフィス」、住宅部門の優秀賞「あおいやね」は地元に根付いた建築家が丁寧な仕事をしている点が高い評価うけました。一方で、住宅部門の最優秀の「N邸」は東京から長野に移り住んだ若い建築家の作品であり、彼らは同時に一般部門の優秀賞も受賞しています。日本全体の建築界をみると、若い世代は新たな建築家像を作ろうとしており、「言葉で語ること」も作品の重要な一部ととらえ、また「言葉」が作品をコントロールしている側面もあります。
ネットで瞬時に情報や物がどこにいても手に入る時代に生きる世代にとって、地方と都市といった視点が重要な意味ではなくなってきていることを感じさせる建築ができつつあると実感しました。こういった新しい流れが、高原に建つN邸や優秀賞の木曽の古い集落に建つ「山の中の家」にも感じられ、これからの日本文化が変わっていく予兆でもあるように感じました。(東 利恵)